2018 American Dialect Society word of the yearは?【言葉を通してアメリカ社会を知る】

こんにちは。

調べ続けてきたWord of the Year 2018もいよいよラストです。今日はThe American Dialect SocietyのWord of the Year 2018をご紹介します。

Word of the Year 2018に選ばれたのはtender-age shelter/facility/camp。他にも、幅広いジャンルの〇〇 of the Yearも選ばれているので、アメリカの流行や社会の動きを知る上で、とっても勉強になるラインナップです。英語で社会問題やニュースについて話せるようになりたいという方は、ぜひ押さえておきましょう!

ハワイのクルーズ船

The American Dialect Societyとは

The American Dialect Societyは1889年に設立され、北米の英語やその他の言語、方言に関する研究を行っています。研究者やアマチュア、大学教授や学生、芸術愛好家、教師、ライター、大学生、大学院生など、様々人たちによって構成され、Word of the Yearは、毎年メンバーの投票で決定しています。2018年のWord of the Yearは29回目。歴史のある賞ですね。

2018 American Dialect Society Word of the Year : tender-age shelter/camp/facility

government detention center for asylum-seekers’ children

政府による難民申請者の子どもの収容施設

メキシコ国境で亡命希望者の子ども収容する、アメリカ政府の施設の婉曲表現である、tender-age shelter/camp/facilityが、2018年を語る上で一番重要な言葉として、Word of the Yearに選ばれました。

2018年6月に初めて登場したtender-age shelter/facility/campという用語。幼児や子どもたちが、不法入国を試みた家族から引き離され、tender-age shelter/facility/campに入れられていることが報じられました。親子を引き離すという非人道的政策を包み隠す表現であるこの言葉は、言葉というものが政治にとって武器になり得るということを示しています。しかし、このニュースが報じられるとともに、国境政策に対する激しい反発が巻き起こり、官僚的婉曲表現も逆効果となりました。

この親子の引き離し政策には世界中から厳しい批判が集まり、のちに停止されました。10月には貧困や犯罪、暴力に苦しむ南米ホンジュラスからの大規模移民キャラバンが発生。アメリカのメキシコ国境を巡る問題は2019年も続きそうですね。

その他の ○○ of the Year

American Dialect Society word of the yearでは、各分野で目立った単語が〇〇 of the Yearとして選定されています。最新のボキャブラリーを増やす上で、とても勉強になるラインナップですね。

POLITICAL WORD OF THE YEAR :  (the) wall

proposed barrier along the US/Mexico border to prevent illegal crossings 

不法入国を防ぐために、アメリカとメキシコの国境に沿って建設することが計画された壁

Word of the Yearに引き続き、国境政策に関する用語が選ばれました。the wallメキシコとの国境に壁を建設することで、不法移民を防ごうという計画です。その是非については現在も与野党が対立し、激しい議論が巻き起こっています。壁の建設により不法入国を斡旋する麻薬組織が得をするという懸念もあるようです。

DIGITAL WORD OF THE YEAR : techlash

backlash against tech innovators
技術革新者に対する反対運動

The Economistによって生み出された新しい言葉です。GoogleやFacebook、Amazonなどのシリコンバレーの巨大企業に対し、独占的支配への規制や取り締まりを求める声が高まっています。Google、Apple、Facebook、Amazonの頭文字を並べた”GAFA”という言葉も生まれていますね。

SLANG/INFORMAL WORD OF THE YEAR : yeet

indication of surprise or excitement

驚きや興奮の表現

yeetは2014年に大流行したダンスで、腕を伸ばし、肩を動かしながら膝を少し曲げる振付です。数年かけて驚きや興奮を表すスラングとして定着したようです。

MOST USEFUL : Voldemorting

avoiding mention of unpleasant person or topic by using a replacement term

代わりの言葉を使って、不快な人や話題への言及を避けること

ハリーポッター最大最強の敵ヴォルデモート卿が由来のこの言葉。魔法使いたちは「ヴォルデモート」を恐れるあまり、その名を口に出すことを避け、例のあの人 (You-Know-Who) 、名前を言ってはいけないあの人 (He-Who-Must-Not-Be-Named) と呼んでいます。

そこから、具体的な名前を使用することを避けることを意味する言葉になりました。ドナルド・トランプ大統領を表すVoldemortingには、”45””the Cheeto”があります。

MOST LIKELY TO SUCCEED : single-use

made to be used only once and destroyed 

使い捨ての

イギリスのオンライン辞書サイトCollinsのWord of the Year 2018に選ばれていましたね。地球環境を守るための取り組みが、いっそう広がっています。

MOST CREATIVE : white-caller crime

phenomenon of white people calling police on black people for doing mundane things

白人が、特に何もしていない黒人のことを警察に通報すること

南北戦争時代のリンカーン大統領による奴隷解放宣言、ケネディ大統領時代のマルコム・Xやキング牧師による黒人差別撤廃運動を経て、法の上では平等となったアメリカですが、完全に人種差別がなくなった訳ではありません。アメリカ同時多発テロ以降、白人の異人種による差別感情は高まっていると言われており、トランプ大統領の誕生でその流れは一層強まっているように感じます。

元は、人気海外ドラマのタイトルにもなっているwhite-collar crime。事務系労働者が主体となって行われる、詐欺、横領、贈収賄罪などを意味する言葉です。それをもじって生まれたのが、white-caller crimeですね。collarとcallerで意味が変わるので要注意です。

EUPHEMISM OF THE YEAR : racially charged

circumlocution for “racist”

人種差別主義者の婉曲表現

こちらも人種差別絡みの言葉です。元は、人種差別の現象を表す言葉として50年前に生まれたracially chargedが、人種差別主義者を表すracistの婉曲表現として使用されるようになりました。

遠回しにracially chargedと言うのではなく、はっきりracistと言うべきだと言う批判が起こっています。

WTF WORD OF THE YEAR : deleted family unit

bureaucratic term that referred to asylum-seeking families whose children were removed

子どもたちと引き離された難民申請者を表す官僚用語

こちらはWord of the Yearに選ばれたtender-age shelter/facility/camp絡みの言葉です。

それまでアメリカ合衆国税関・国境警備局のデータベースにあるカテゴリーは “family units””unaccompanied alien children” だったため、親から引き離して収容した子どもたちを登録するカテゴリーがなく、“deleted family unit”という言葉が生まれました。

The American Dialect SocietyのWord of the Year 2018からは、ドナルド・トランプの移民政策が、アメリカ社会に与えた影響の大きさが伺えますね。

HASHTAG OF THE YEAR : #nottheonion

reporting something true that seems like satire from The Onion

The onion(アメリカの風刺フェイクニュースサイト)の風刺記事ように見える真実を報じること

The onionは風刺的なフェイクニュースを報じるアメリカのサイト。あまりに馬鹿げていてとても真実とは思えないようなことを報じるニュースに対し、#nottheonionというハッシュタグが使われるようになりました。

事実は小説よりも奇なりと言いますが、とても現実とは思えないニュースが次々と流れてきます。そもそもドナルド・トランプ大統領の誕生も、#nottheonionでしたよね。

EMOJI OF THE YEAR : 🤔

thinking face (indicating bemused pondering) 

考えている表情(ぼんやりと思案している様子)

日本生まれの絵文字は、Word of the Yearにカテゴリーを持つほど一般的に使用されるようになっているようです。2018年は🤔の使用が最も顕著だったとのこと。誰かや何かに対して疑問を持ったり、蔑んだりしていることを表し、真面目にもふざけても使われるようです。

 

その他の候補を含む一覧はこちらに掲載されています。

https://www.americandialect.org/wp-content/uploads/2018-Word-of-the-Year-PRESS-RELEASE.pdf

 

言葉を知ることは、社会を知ることにも繋がります。どんどん生まれる新しい言葉を全て覚えることは難しいですが、Word of the Yearを押さえておけば、英会話レッスンでのディスカッションにも活かせます。日常会話ができることも大事ですが、大人の語学学習では教養のある会話も楽しめるようになりたいものです。

 

ほかの辞典によるWord of the Year 2018はこちら。 

www.inspire-english.net

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Today's proverb

Two wrongs do not make a right.:他人が悪い事をしているからといって自分もそうしてよいということにはならない