Australian National Dictionary CentreのWord of the Yearで2018年のオーストラリアを知る。

こんにちは。

先日ご紹介したMacquarie Dictionaryに引き続き、オーストラリアのWord of the Year 2018を紹介します。今日は、Australian National Dictionary CentreのWord of the Year 2018です。Macquarie Dictionary以上にオーストラリア密着型のラインナップなので、オーストラリアの文化や社会の動きに興味のある方にとっては、とても面白いですよ。

シドニーのコアラ

Australian National Dictionary Centreとは

Australian National Dictionary Centreとは、1988年にThe Australian National UniversityOxford University Press Australiaが共同で設立した、オーストラリア英語の調査機関です。

slll.cass.anu.edu.au

毎年その一年を表す単語や表現を選ぶWord of the Yearは、政治、文化、社会を写すものであり、辞書編纂として興味深く、オーストラリアらしい語句であることを基準にリストアップされています。

Word of the Year for 2018:Canberra bubble

the insular environment of federal politics

連邦政治の島国環境

Word of the Yearにはオーストラリアの首都の名前が入ったCanberra bubbleが選ばれました。上記の訳語だとちょっと意味が分からないので、詳しく見てみたいと思います。

Canberra bubbleは、連邦の政治家、官僚、政治ジャーナリストが、キャンベラで起こっていることばかりに注力していることです。オーストラリア全土で日々起こっている問題に目が向けられていないということですね。

2001年に生まれた言葉ですが、2015年から使用頻度が高まりました。特に2018年はオーストラリアの政治に混乱のあった1年で、スコット・モリソン新首相が、自身の政治スタンスと一連の騒動からの距離感を示す為にCanberra bubbleを使ったそうです。10月に公表されたビデオの中で、モリソン首相は以下のように述べています。

The Canberra bubble is what happens down here, when people get all caught up with all sorts of gossip and rubbish, and that’s probably why most of you switch off any time you hear a politician talk.

ここでは今Canberra bubbleが起きている。人々はゴシップやくだらないことにばかり捉われている。だから政治家の話を聞くとき、皆さんの多くはいつも、スイッチをオフにしているのだろう。

しかし残念ながら、この新首相自身もどっぷりCanberra bubbleに浸かっているという指摘もあるようですね。

このCanberra bubbleは、アメリカの政治スローガンであるdrain the swamp(湿地を排水する)”と比較されます。この"drain the swamp"の語源は、マラリアの発生を防ぐ為に沼地の排水をして蚊の発生を抑えていたこと。それが連邦政府が抱えている問題を解決する、有害なものを取り除く、腐敗を一掃するといった意味で使われるようになりました。この場合の有害なものとは、国民生活に関わる本当の問題に向き合うことよりも、政治活動に勤しむ政治家たちのことです。最年右派の政治家は、"drain the swamp"のオーストラリア版である"drain the billabong(水たまりを排水する)"というスローガンを使用しているそうです。

このbillabongオーストラリア英語なんですね。初めて目にしました。Cambridge Dctionaryでは、以下のように定義されています。

In Australia, a low area of ground that was part of a river in the past and that only fills up with water from the river during a flood.

かつて川の一部だった地面の低い場所で、川の流れから来た水が溜まっているところを指すオーストラリア英語

オーストラリアでは、議会や官僚の拠点であるキャンベラへのCanberra-bashingが長く続いており、その流れにCanberra bubbleという言葉がぴったりはまったようです。

日本でも、東京一極集中の政治・経済や、国民不在の政治が問題になっていますよね。土地の大きさは違えど、他の国から離れた島/大陸で一つの国を成すという点においては、実は日本とオーストラリア、他にも何か共通するものがあるのかもしれません。Tokyo bubble、日本に入って来たら流行るんじゃなかろうか。

その他のショートリスト

それでは、Word of the Year 2018からは外れてしまったものの、ショートリストに挙がった重要語句を見ていきたいと思います。

bag rage

anger provoked in a customer by the removal of free plastic bags at the checkout

レジ袋廃止に対する客の怒り

2018年は使い捨てのプラスチック製品が環境に及ぼす影響に関心が集まった年でした。CollinsのWord of the Year 2018には、single-useが選ばれていましたね。

オーストラリアでは、買い物袋の使用を促進するため、7月〜2月にかけて大手スーパーマーケットでレジ袋が有料化され、bag rageが巻き起こったそうです。

日本のスーパーは既に有料化され、コンビニも有料化が検討されています。消費者によるbag rageは起こっていないものの、店側からはトラブルを懸念する声が挙がっているようですね。今後の動きが気になるところです。

世界的にも、2019年はますます脱プラスチック製品の流れが強まりそうですね。

blockchain

a system in which records are maintained across several computers that are linked in a peer-to-peer network, used especially for cryptocurrency transactions

特に仮想通貨の取引で使用される、分散型台帳技術。ピア・トゥ・ピアネットワークでリンクされた複数のコンピュータ同士で台帳情報を共有し連携する。

技術分野では日々新しい用語が生まれています。2018年はオーストラリアだけでなく、世界中で、サイバーセキュリティや、プライバシー仮想通貨の話題がトレンドとなりました。

中でも仮想通貨の取引を保護・管理するための技術であるblock chainは、日本でも度々耳にしましたよね。blockはデジタルデータのかけら(取引情報のひとかたまり)、chainはこのデジタルデータ同士の繋がりを指しています。このblock chainが財務や銀行業務にもたらす影響や、台帳保持に対する適用の拡大が大きな話題となっています。

改竄耐性が高いとされるブロックチェーン。ビットコインで一躍話題となったシステムですが、その応用範囲は広く、今後ますます活用されていくことと思います。ここでしっかりとその概念を押さえておきたい用語ですね。

drought relief

financial or practical assistance given to those in special need or difficulty due to severe drought conditions

深刻な干ばつによって苦境に立たされた人たちに対する、金銭的、実用的援助

2018年、ひどい干ばつがオーストラリアを襲いました。その為、ファーマーたちを支援すべく、多くの活動家たちがコンサートや”sausage sizzles”と呼ばれるファンドレイジングイベントなど、様々な”Buy a Bale”キャンペーンを展開しました。

drought reliefはオーストラリア英語ではありませんが、干ばつが2018年のオーストラリアに与えた影響は大きく、Word of the Year 2018の候補になったようです。

この”sausage sizzles”という聞き慣れない言葉。これもオーストラリアやニュージーランド独自の文化だそうです。BBQのソーセージを食パンに挟んだものがsausage sizzleで、義援金を集めるためのイベントによく使われるみたいです。

オーストラリアでは大きな災害が続いており、最近も、洪水や山火事などの災害に対し、ホームセンターのBunningsがsausage sizzleによるファンドレイジングキャンペーンをオーストラリア全土で行うとことがニュースになっています。

www.lakesmail.com.au

BBQを愛していると言われているオーストラリア人。オーストラリアではBBQをバービー(Barbie)と呼び、家族や友人と過ごす大切なイベントになっているようですが、チャリティにもバービーが登場するんですね。

fair dinkum power

dispatchable energy; coal, as contrasted with renewable sources of energy

実行可能なエネルギー

(再生可能なエネルギー資源の対照としての)石炭

2018年に新しく首相となったスコット・モリソン氏が政治演説で何度も使用したため、オーストラリアの人々は、fair dinkin featureという言葉をたびたび見聞きすることとなりました。他にもfair dinkinを使った新しい表現が生まれましたが、中でも一番目立ったものがfair dinkum powerです。

そもそもfair dinkumという言葉を聞いたことがなかったのですが、これもまた1880年代に生まれた歴史のあるオーストラリア英語で、"reliable(信頼できる), genuine(本物の), honest(正直な), true(真実)"といった意味があり、政治家によってしばしば用いられるそうです。同様のオーストラリア英語に、fair go(正当かつ公平な機会)があります。

地球温暖化に悪影響を及ぼすにも関わらず、モリソン新首相は、石炭などの伝統的なエネルギー資源をfair dinkum powerという表現を使用して擁護しており、pollie-waffleだとして疑問の声が多く上がっています。ここでも出てきたオーストラリア英語、pollie-waffle。なかなか定義の書いてあるサイトが見つからず苦労したのですが、下記のサイトによると、”政治家が国民に餌をばらまくために使う、実態のない言葉”といった意味のようです。

m.coffscoastadvocate.com.au

Really, it’s another meaningless, vacuous, example of ‘pollie-waffle’ ... the language used by our political masters whenever it’s necessary to feed the plebeians with nothing of substance.

また、このpollie-waffleは、Polly Waffleという名前のオーストラリアのお菓子が由来です。"pollie"はオーストラリアのスラングでpolitician(政治家)、"waffle"は、曖昧にごまかして話したり、書いたりすることを意味しています。また、"The pollie without the waffle" が選挙活動のスローガンになっているそうです。

オーストラリア英語、面白いですね。

NEG

National Energy Guarantee; a regulatory obligation imposed on energy companies to provide a reliable supply of energy while meeting emissions reduction targets

National Energy Guaranteeの略

排出量の低減目標に合わせながら安定した電力を供給するよう、電力会社に課せられた、取り締まり義務

オーストラリアの2018年は、気候変動やそれに対する政府の取り組みが議論の的となった1年だったようです。オーストラリア政府が掲げたNEGポリシーは、オーストラリアだけでなく、世界中で話題となりました。このポリシーに関する議論は、マルコム・ターンブル前首相やスコット・モリソン新首相のリーダーシップに対する抗議を引き起こしました。国民の多くはこのNEGの詳細を知らず、この言葉が繰り返し使用される中で、明白で分かりやすいエネルギーポリシーが求められています。

 

深刻な環境汚染への関心が世界中で高まった2018年。Australian National Dictionary CentreのWord of the Year 2018は、地球環境に配慮した社会の動きと、政治の混乱、国民の苛立ちが現れたラインナップですね。オーストラリア英語が盛り込まれていたので、とても勉強になりました!

  

他の辞書のWord of the Year 2018はこちらをご覧ください。  

www.inspire-english.net

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Today's proverb

Where there’s smoke, there’s fire.:火のないところに煙は立たぬ