【英検1級二次試験スピーキング対策】英語学習アドバイザーが提案する第二言語習得論に基づく学習法

こんにちは。

このブログでも何度かお話していますが、わたしはInspire Englishというオンライン英会話スクールで学習アドバイスを担当しています。2019年の英検1級合格以降、同じく英検1級合格(特に二次試験突破)を目指す方々を対象に、ご自宅での勉強法や試験当日の心構えをお話してきました。

また、このブログでも自分の体験を元にした二次試験対策法を公開し、たくさんの方に読んでいただいております。

www.inspire-english.net

本当にありがとうございます!

もちろん個人の生々しい体験記兼対策法としては自信を持って投稿した記事なのですが、数々のアドバイジングセッションを通して気になっていたことがありました。それは”受験者それぞれの性格・生活・目的等によって有効な対策方法が異なる”ということです。個人の合格体験に基づく対策法は、いわゆるサンプル数1のデータですので、必ずしもすべての方の参考になるとは限りません。

そこで、わたしが学習アドバイザーとしてレッスンの様子や試験本番でのご様子、試験結果を見聞きしてきた事例と、第二言語習得論という科学的根拠を合わせて、一個人の受験体験に頼らない効果的な対策法を再度まとめてみました。

第二言語習得論(Second Language Acquisition, SLA)は、母語以外の言語を学ぶ過程や仕組みを研究する学問です。習得プロセス、母語の影響、学習者要因、習得環境、効果的な学習方法などを知ることができるので、英語学習の強い味方になってくれます。

以前このブログでも一冊おすすめさせていただきました。

www.inspire-english.net

ただし、本記事は具体的な学習プランを提示するものではありません。個々の現在のスピーキング力や知識量、試験本番までの期間や生活環境などに応じて変わるため、一般化することは残念ながら困難だからです。学習計画を立てるのはこの記事を読んでくださっている皆さん自身です。

しかし、学習効率を高めるためのコツは存在します!学習計画に組み込むべき練習方法を紹介し、英検1級の二次試験対策を後押しすることを目的としてこの記事を書きました。

英検1級のスピーキングパートは、「仮に日本語であっても、うまく話せる自信がない…」とおっしゃる方も多いハードな内容です。また、一次試験のように、苦手なパートは他のパートでカバーするという戦略がとれないため、ひたすらスピーキング練習に取り組む苦しい戦いとなります。

また、

  • この試験に到達するまでスピーキングの経験がほとんどない
  • 人前で話をすることがとても苦手
  • 自分の意見を求められても困ってしまう

といった悩みを持ち、「自分には二次試験合格は無理なのではないか」と不安を感じている方もたくさんいらっしゃると思います。

もちろん簡単に合格できる試験ではありませんが、「二次試験に求められる能力(ゴール)」と「本人の現在の能力(スタート)」にあった学習法を続けることで、合格を掴むことはできます!

私がこれまでInspire Englishで出会ってきた生徒様にも、最初のスピーチ練習がボロボロで自信を無くし、試験に対して恐怖や不安を抱えていた方がたくさんいらっしゃいます。しかし、アドバイスやレッスンを通して対策方法を考え、必要な努力を重ねた結果、スピーチやQ&Aの質が上がって、合格に繋がりました。

本記事が以下のような皆様の強力な味方となれば嬉しいです。

  • 英検1級二次試験対策を今から始める方
  • 二次試験不合格を経験して、学習計画を立て直したい方
  • 長く対策を続けているものの、成果が感じられない方
  • 時間がない中で合格を目指す方法を知りたい方
  • 他の合格者の方がどんな対策をしていたかを知りたい方

なお、本記事の作成にあたって、下記書籍を参考にさせていただきました。

本記事の後半は有料(¥500)とさせていただいております。最後まで読んでいただけたら嬉しいです。
また、新たな情報があれば随時追加していきます。たまに読み返しにきてくださいね。

英検1級二次試験の詳細

学習計画を立てるには、ゴールを具体的に知る必要があります。英検協会のウェブサイトや市販の対策本など、情報を得る手段はたくさんあります。しっかり情報を集めておきましょう!

既に情報収集済の方はこのチャプターは読み飛ばしていただいた大丈夫です。

英検公式サイト

英検の公式サイトには、試験形式の他、英検1級のスピーキングに求められる能力が記載されています。また、サンプルトピックやバーチャル二次試験なども公開されていますので、まずは公式の情報をしっかり確認してください。

*下記引用の太字は作者によるもの

測定技能と検定形式
試験概要
英語での個人面接(約10分)
面接委員2人
スピーチ・応答の内容、語い、文法、発音の正確さなどの観点で評価
試験内容
  • 自由会話: 面接委員と簡単な日常会話を行う。
  • スピーチ: 与えられた5つのトピックの中から1つ選び、スピーチを行う。
  • Q&A: スピーチの内容やトピックに関連した質問に答える。

1級の試験内容 | 英検 | 公益財団法人 日本英語検定協会

各級の目安
二次試験では2分間のスピーチと、その内容への質問がなされます。
カギは英語の知識のみでなく、相手に伝える発信力と対応力
世界で活躍できる人材の英語力を証明します。

各級の目安 | 英検 | 公益財団法人 日本英語検定協会

各級の審査基準
広く社会生活で求められる英語を十分理解し、また使用することができる。社会性の高い幅広い話題についてやりとりすることができる。

各級の審査基準 | 英検 | 公益財団法人 日本英語検定協会

Can-doリスト
専門的な話題について、情報や自身の考えなどを専門的な語句を用い、目的に応じて主張や根拠を明確にしながら詳細にかつ論理的に展開をし、話して伝えることができる。

英検Can-doリスト一覧 | 英検 | 公益財団法人 日本英語検定協会

試験内容・サンプルトピック

1級の過去問・試験内容 | 英検 | 公益財団法人 日本英語検定協会

バーチャル二次試験

英検バーチャル二次試験 | 1級 | 試験問題・準備 | 英検 | 公益財団法人 日本英語検定協会

過去問問題集

実際に出題されたトピックは公式サイトや対策本には載っておらず、過去問題集でのみ確認できます。特に各種対策本は様々なトピックに応用できるよう、本番のトピックよりもシンプルになっている傾向があります。

試験のプレッシャーもあいまって、1分間の考慮時間の中で5つのトピックに目を通すのに想定より時間がかかってしまい、スピーチの内容を考える時間がなくなってしまったという声も聞かれます。そして、対策本のみで練習していたために、本番のトピックの長さに気持ちが焦ってしまい、頭が真っ白になってしまったという体験談も聞きました。

本番で面食らってしまうことのないよう、過去問題集で実際のトピックを確認しておきましょう。

対策本

「過去問題集だけでは練習用のトピックが足りない」、「色んなサンプルスピーチを読んで学びたい」、「対策方法も知りたい」という場合は、対策本を追加しましょう。それぞれに特徴がありますので、書店で実際に手に取って確認するか、口コミなどを参考にして選んでみてください。

ただし、対策本に掲載されているサンプルスピーチは満点を超えるレベルのものであると思います。(日本語訳の方を見て、「日本語で咄嗟にこのレベルのスピーチができるか?」と考えていただくと分かりやすいかと思います。)

英語ネイティブであるInspire English講師のTakaも、得意な分野のトピックでない限り、1分の準備時間であんなに綺麗にまとまったスピーチをするのは難しいと話しています。

ですので、サンプルスピーチを読んでも落ち込まず、あくまで”理想のスピーチ”として参考にしてくださいね。

14日でできる!英検1級 二次試験・面接 完全予想問題

定番の対策本ですね。14日でできる!というタイトルの通り、14日分にチャプターが分かれているので、学習計画が立てやすいのがメリット。(ただし、無対策の状態から14日でスピーチ力が完成するかというと、なかなか厳しいと思います。)また、公式サイトのバーチャル二次試験はイラストですが、こちらは人が演じている動画でバーチャル体験ができます。この動画は、後半の"モチベーション維持"のところでも役に立つと思います。

英検1級 面接大特訓

こちらも定番の対策本です。良い本なのですが、この本が発売された当初、英作文対策も兼ねていたこともあって、スピーチ原稿としてはレベルが高いです(ボディーも3つで構成されています)。ですので、このレベルで話せないと合格できないとプレッシャーを感じる必要はありません。

英検1級 面接・攻略ポイント20

こちらは最近人気が高まっている対策本です。掲載されているトピックは8つですが、それぞれに対して肯定・否定の両側のサンプルが載っているので、参考にしやすいのがメリット。また、Q&Aに関しては、アウト・なかなかの答え・パーフェクトな答えと、レベル別に3種類載っているので、とても勉強になります。(私自身の個人的な体験では、”なかなかの答え”くらいの回答でQ&Aは満点でした。)

完全攻略!英検1級二次試験

英検1級の二次試験に頻出のトピックに対し、

  • 一般的な論点を短文で読み・聞き・音読
  • トピックに関する会話を聞き、クイズ形式で論点を整理
  • 自分のスピーチをアウトライン化
  • スピーチ原稿を作って音読&ブラッシュアップ
  • サンプルスピーチを読み・聞き・音読

という手取り足取りのステップでじっくり知識と理解を深めていく構成です。こちらも、14日間で学べる構成になっています。実際にスピーチをする前の準備段階をしっかり支えてくれる本ですね。

英作文対策本

二次試験のスピーチのトピックと一次試験のエッセイのトピックの出題分野は同じですので、英作文の対策本も活用できます。エッセイのボディは3つという指定がありますが、スピーチの際は1つ減らしてボディ2つで話すと、落ち着いた程よいペースで2分間のスピーチができます。

英検1級二次試験合格に必要な能力

英検は細かな採点基準が公開されていないので、「ここがボーダーライン!」と言い切ることはできないのですが、公式サイトに書かれている情報と、これまでのアドバイザーとしての経験から、英検1級二次試験合格に必要な力を書き出してみたいと思います。

英語(スピーキング)力

言うまでもない話ですが、英検は英語の試験です。受験する級に相当する英語力が求められます。一次試験に合格した、もしくは合格しそうな方であれば、その下地はあると言えるでしょう。もちろん4技能の中での得手不得手は誰しもあるので、スピーキングが極端に苦手という可能性は考えられますが、少なくとも1級相当の英語の言語知識はあるはずです。(知識をスキルにするトレーニングは必要です。)

ただし、求められるスピーキングのレベルは、そこまで高くありません。目安としては、準1級のライティングくらいのレベルでしっかり話せれば、十分合格が目指せます。

英検1級だからと必要以上に高い理想像を思い描いていると、かえって何も話せなくなってしまうこともあります。まずは背伸びせずに使える表現で自信を持って話せるようになること、そしてだんだん表現のバリエーションを増やしていくことを目標にしていきましょう。

対応力

では、スピーキング力さえあれば合格できる試験と言い切れるでしょうか。

実際には、「一次試験には比較的すんなり合格したものの、二次試験には苦戦している」という方がたくさんいらっしゃいます。また、日本語より英語が得意だという帰国子女の方や、TOEFLなどのスピーキングを含む他の試験で1級相当のスコアを取った方でも、英検の二次試験では不合格になってしまうことがあります。

つまり、1級相当のスピーキング力”だけ”で合格するのは難しいということです。

目安や審査基準、Can-doリストからも、単純な英語力のみが求められている訳ではないということが分かります。

社会性の高い幅広い話題についてやりとりすることができる。カギは英語の知識のみでなく、相手に伝える発信力と対応力。専門的な話題について、情報や自身の考えなどを専門的な語句を用い、目的に応じて主張や根拠を明確にしながら詳細にかつ論理的に展開をし、話して伝えることができる。

ちなみにこの社会性というのは”身近な社会”だけでなく、”国際社会”も含まれており、国際教育(平和、人権、環境、開発などの地球規模的課題や今日的課題に対し、自分の考えや意見を自ら発信することのできる態度・能力の育成)という理念に根差した出題傾向だと考えられます。

英検は文部科学省の後援ですしね。

そのため、国際教育に触れる機会が多かった、もしくはこういった国際社会の問題に対して日ごろからアンテナを張っているという方は、この試験への対応力が高いと思われます。

www.mext.go.jp

ネットで散見される”英語力さえあれば英検1級二次試験には合格できる”という意見は、おそらく、無意識のうちにこの知識や能力を身につけてきた方による意見なのではないかなと思っています。

日ごろから議論好きな方はさておき、意見を主張するのが苦手という方がとても多いです。「自分の意見をしっかり持ち、根拠を添えて臆せず述べる」というマインドを身につけることも大切です。

発信力

まず自身の日頃の話し方を振り返ってみましょう。

日本語で話すときでも、

  • 声が小さい
  • 話し方が明瞭でない
  • だらだらと話してしまう

といった特徴のある方は、英語でも同じように話される場合が多いです。

そうなると、どんなに良いことを話していても、そもそも言葉が面接委員に届きません。そのため、残念ながらなかなか合格できずに苦しむことになってしまいます。

日ごろから、自分の言葉を分かりやすく相手に届ける意識を持って話すようにしましょう。

また、日ごろから緊張する場や人前で話すことに慣れている方は、この試験と相性が良いように感じますが、逆に緊張しやすいタイプの方は、自主練習やレッスンで調子が良くても、試験本番では実力が発揮できないという場合もあります。

過去に二次試験満点を取られた生徒様は、レッスンでのスピーキング力や対応力が突出していたわけではなく、「オペに比べたら大した緊張ではありませんでした」とおっしゃていたお医者様でした。

上にも記載したように、英検1級の二次試験には、簡単な日常会話と2分間のスピーチ、Q&Aの3パートがあります。極度のプレッシャーの中これらに堂々と対応するには、しっかりと自信をつけて試験に挑む必要があります。

緊張を制し、自分の意見を面接委員にはっきり届けられるかどうかは、この試験の結果を大きく左右する要因の一つです。この記事後半の心の準備のパートを読んで、万全の状態で試験に挑みましょう!

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