こんにちは。
英語のネイティブスピーカーと話したり、洋画や海外ドラマを見たりする時に、「難しい単語は全く出てこないのに、さっぱり意味が分からない!」と感じたことはありませんか?それ、idiom(慣用句)やphrasal verb(句動詞)が原因かもしれません。
例えば、pick on。”いじめる”という意味の句動詞なんですが、pick(選ぶ)にonがくっつくだけで、全然違う意味になってしまうので、知らないとさっぱり話が分からなくなってしまうのです。
一般に、英語話者はイディオムや句動詞を好んで使い、学習者は苦手だと言われています。ということは、ここを補強すればぐっと英会話が楽しめるようになるはず!でも紛らわしくてなかなか頭に入らないんですよね…。
何かいい教材はないかと探していて出会ったのが、『Idioms and Phrasal Verbs』でした。
2ヶ月半かけてひと通りやり終え、とっても使いやすかったのでご紹介したいと思います。
- idiom, phrasal verbとは?
- イディオムと句動詞の重要性
- 使えるイディオム&句動詞を学べる『Idioms and Phrasal Verbs』
- 『Idioms and Phrasal Verbs』をやり終えた感想
idiom, phrasal verbとは?
そもそも、idiomやphrasal verbの定義って?と思う方も多いかと思います。わたしも思ってました。学生時代には、英熟語(イディオム)としてひとまとめにされていた記憶があります。しかし、『Idioms and Phrasal Verbs』の定義によると、この2つにはれっきとした違いがあるようです。
慣用句(idiom)
Idioms are usually defined as groups of words whose overall meaning is different from the meaning of individual words.
日本語では慣用句と訳されるidiomは、「単語のかたまりで、全体の意味は、個々の単語の意味と異なる」と定義されています。
例として、over the moonが挙げられていました。直訳すると”月を越えて”となりますが、”大喜びして、とても幸せで”という意味を持ちます。
月を越えていく様子を想像してみると、なんとなく気持ちは分からなくもないですが、意味を知らないと「なんで突然月の話になった!?」と、会話から取り残されてしまいますよね。
句動詞(phrasal verb)
Phrasal verbs consist of two and occasionally three words: a base verb and at least one particle (preposition or adverb). Many phrasal verbs are idiomatic: in other words, the meaning of the verb and particle is different from the base verb on its own.
句動詞の方はというと、「基本動詞と少なくともひとつの不変化詞(前置詞や副詞といった語尾変化のない品詞)という、2つまたは3つの単語で構成される。多くの句動詞はイディオムのように、元の基本動詞とは意味が異なる。」と定義されています。
例えば、give upは”諦める、やめる”、give inには”降参する、屈服する”といった意味があります。
どちらも、give(与える)+前置詞で形成されており、なんとなくgiveのニュアンスを感じなくもないですが、upとinのどちらの前置詞が後に続くかによって意味が変わるところがややこしいですよね。
イディオムと句動詞の重要性
定義は異なるものの、”単語のかたまりが元の単語とは異なる意味をなす”という点においては共通しています。これが、「全部知っている簡単な英語しか出てきていないはずなのに、何の話をしているのかさっぱり分からない」という現象を引き起こすのです。
そんなイディオムと句動詞を、ネイティブスピーカーは好んで使います。特に会話においての登場率が高いです。しかも無意識に使っています。
”bring home the bacon(生活費を稼ぐ、成功する)”のような古典的なイディオムが使われる場面は少ないかもしれません。しかし、”take advantage of(利用する、だます)”、”more or less(だいたい、幾分)”、”don't ask me(分からないよ)”といったイディオムは、よく耳にしますよね。
ネイティブの英会話の先生たちにも、「句動詞やイディオムを使えるようになると、よりナチュラルな英会話になるよ」と、言われたことが何度かあります。
しかし、定型表現であるidiomは冠詞までちゃんと正確に覚えないと意味をなしませんし、ただでさえややこしい前置詞が動詞にくっついて形成されるphrasal verbは、これまた非常に覚えにくいのです。そのため私たち学習者は、1語で表せる小難しい英単語の方を使う傾向にあるんですよね。
しかし、Dee GardnerとMark Davisが2011年に発表したレポートによると、1億語のBritish National Corpusを分析した結果、20の動詞と8種の副詞的単語による160の組み合わせが、句動詞の登場回数518,923のうちの半数以上を占めるそうです。さらに、登場回数TOP25の句動詞が全体のおよそ1/3、TOP100の句動詞が半分以上を占めるとのことですから、使用される頻度の高い句動詞を押さえておけば、一気に理解度が上がるということですね。しかも、このTOP100の句動詞が559通りの意味を持つそうです。句動詞を覚えれば、表現の幅がぐっと広がりそうですよね。
idiomは冠詞(a,the)などが紛らわしくを正確に覚えるのは大変ですが、会話の中であれば、多少間違っていても察してもらえるので大丈夫。
idiomは文化や歴史を反映したものや、詩的な表現が多く、英語だけでなく言語そのものに興味のあるわたしは、idiomを勉強すること自体が楽しいです。
使えるイディオム&句動詞を学べる『Idioms and Phrasal Verbs』
それでは、イディオムと句動詞をまとめて学べる『Idioms and Phrasal Verbs』をご紹介したいと思います。
特徴
このテキストは、イギリスの名門Oxfordから出版されている、英語学習者及び英語講師向けのテキストです。中級者(Indtermediate/CEFR B1&B2)向けと、上級者(Advanced/CEFR C1&C2)向けの2冊が販売されています。語学学校の授業で使うためのエクササイズも入っていますが、イディオムと句動詞の意味と例文に加え、十分な量の練習問題がついているので、自習でも問題なく使える構成になっています。
掲載されているイディオムと句動詞は、日常的に使用されるものが厳選されており、その数はそれぞれなんと1000以上!文法学習の定番『English Grammar in Use』に比べればページ数はかなり少ないですが、中身は非常に濃い本になっています。
1,000以上のイディオムと句動詞が、全60パートに分かれて掲載され、5~10個のパートごとに章立てされています。さらにそれぞれの章の終わりには復習テストがついています。1パート30分~1時間くらいの分量ですので、1日1パートずつ、週末に復習テストを追加というペースであれば、2ヶ月で終わります。
少なくとも3ヶ月以内には1周できますので、飽きる前にやり切れると思います。
イチ押しポイント
この本のイチ押しポイントは以下の3点です。
英語を英語で学べる!
日本人向けに作られたテキストではないので、すべて英語です。もちろんそれぞれのイディオムと句動詞の定義も、英語で解説されています。英語は英語で学ぶのが望ましいと言われ、中級者以上になると英英辞典の使用を勧められますが、英語のテキストであれば同様の効果が得られます。
定義を読んだだけではスッキリ理解できないものもありますが、例文を読み、問題を解いているうちに、だんだん理解できていくので大丈夫です。日本語を介して学んでいないので、「日本語訳はよくわからないけど、使いどころは分かる」という語彙が増えていきます。
ネイティブ講師から学ぶ時と同じプロセスを体験することができますね。
複数の例文に出会うことができる!
英英辞典で意味を調べるだけでは、1つの例文にしか出会えません。しかしこのテキストは、冒頭の例文の他、ドリルパートにそれぞれ1,2回登場します。ドリルパートは穴埋めや2択、間違い探しなど様々な種類の問題がありますが、どれもイディオムや句動詞を含む例文になっています。さらに、章末テストもありますので、合計3つ以上の例文に出会えることになります。
いろんな例文に出会うことで、そのイディオムや句動詞が使用されるシチュエーションがしっかり理解できますし、ニュアンスの違いも感覚でつかめます。
自分で復習しなくても復習パートがあるというのもありがたいですね。ただし、1周取り組んだだけで1,000個を覚えるのは不可能に近いです。
完璧にマスターしようと思ったら何周かする必要があると思います。
使われるシチュエーションがイメージしやすい!
それぞれのイディオムや句動詞は、ただ羅列されている訳ではなく、それぞれの章、パートごとにテーマが設定されています。そのため、使用されるシチュエーションをイメージしながら学ぶことができます。この”イメージする”というプロセスが、使える語彙力を高めてくれます。
また、非常に”英語圏らしい”例文で構成されています。特に、旅やパーティー関連のパートは、例文から英語圏の文化を感じることができて楽しいです。
わたしは、英語だけでなく海外生活にも興味があるので、冒頭の例文パートを読むのが楽しみでした。
『Idioms and Phrasal Verbs』をやり終えた感想
わたしの場合、イディオムや句動詞を学ぶことなく中級~上級のレベルにたどり着いてしまったので、ちょっとした雑談でも小難しい単語を並べて話してしまい、”こなれた”会話を楽しめないことがコンプレックスになってきていました。
しかし、日本のちょっぴり田舎に住んでいるので、外国人の方と会話を楽しみながら実践的に学べる環境は近くにありません。しかも、本を読むだけでは、30代の頭にはなかなか入ってきません。
「これはいよいよなんとかしなければ。できればドリルなどで手も動かして覚えたい!」と思って見つけたのが、この『Idioms and Phrasal Verbs』でした。
例文は面白いですし、各パートの分量も少なすぎず多すぎず、非常に丁度よいです。ドリルのパターンも複数あるので、1冊飽きずに続けられました。ただし、上でも述べたように、1周だけで全部覚えきるのには無理があります。句動詞が紛らわしいことには変わりがありませんし、イディオムも「aだっけ? theだっけ??単数?複数??」みたいなことが度々おきます。しばらく例文の音読などを続けて、頭と身体に染み込ませていきたいと思っています。
残念な点は、音声データがないことです。例文だけでいいので音声データがあれば、覚えやすくなるのですが…。また、授業で使用するためのエクササイズには、一様な答えがないので、自分が作った文章が合っているのかどうかいまいち自信が持てず、もやっとします。
とは言え、例文+定義+ドリルの形式で、手堅くかつ楽しく学べるテキストとして、非常に使いやすくまとまった本だと思います。イディオムや句動詞を身に付けたいという方には、とってもおすすめの教材です。
ナチュラルな英語表現を手に入れたいなら避けて通れないイディオムや句動詞。『Idioms and Phrasal Verbs』なら、英語で”英語の感覚”を学ぶことができます!
メジャーなテキストではない為、残念ながら、洋書のかなり多い書店でないと店頭には置かれていない思います。わたしはAmazonで購入しました。
英語中級者、わたしのようにCEFRでC1レベルでもイディオムや句動詞が苦手な方は、Intermediateから始めるのがいいと思います。
Oxford Word Skills: Intermediate: Idioms and Phrasal Verbs Student Book with Key
- 作者: Ruth Gairns
- 出版社/メーカー: Oxford University Press, USA
- 発売日: 2011/01/13
- メディア: ペーパーバック
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Advancedの方はまだやっていないのですが、Intermediateと同様の構成のようです。上級者の方、イディオムや句動詞にある程度自信がある方はこちらがおすすめです。
Oxford Word Skills: Advanced: Idioms & Phrasal Verbs Student Book with Key Advanced
- 作者: Ruth Gairns
- 出版社/メーカー: Oxford University Press, USA
- 発売日: 2011/02/17
- メディア: ペーパーバック
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以上、使える英語を身に着けられるテキスト、『Idioms and Phrasal Verbs』のご紹介でした。
Today's proverb
Soon learnt, soon forgotten.:すぐ覚えてしまったことはすぐに忘れる