こんにちは。
早速ですが皆さん、”説得力のある英語エッセイ/スピーチ”ってどんなものなのか、具体的にイメージできますか?「何だかよく分からない…」「そんなの難しそう…。」「日本語とどう違うの?」と感じる方が多いのではないでしょうか?
そもそも日本の教育において、自分の意見を論理性を持って述べるためのトレーニングを受ける機会ほとんどありません。宿題で作文を課されたこともあると思いますが、そこで述べることは基本的に”感想”です。また、何かを調査して発表する課題もあったかと思いますが、”調べて分かったこと”を述べるのみで、自分の意見は含まれていないことが多いですよね。そのため、英検、TOEIC、TOEFL、IELTSなどのライティング/スピーキングを含む試験を受験する際になって初めて、「論理的に自分の意見を述べるってどういうことなの?」という疑問にぶち当たります。しかし試験対策となるとその疑問にじっくり取り組む時間がないため、その疑問は脇に置いて、とりあえず模範解答を見て真似る(時には丸暗記)ことで何とか合格点/目標点を達成して終わってしまいがちですよね。
私自身、この問題に目をつぶったまま英検1級を受験し、何とか一次・二次ともに合格したものの、もやもやとした疑問が残っていました。
また、Inspire Englishというオンライン英会話スクールで、英検1級/準1級を受験される方に学習アドバイスをしているのですが、皆さん最後まで悩まれるのが、
- 自分の意見がない、分からない
- 意見に対する根拠がない
- 自分のエッセイやスピーチが論理的になっているか自分では分からない
といった点です。
今日は、ライティング/スピーチにお悩みの方にお勧めの1冊、『英語でロジカル・シンキング』をご紹介いたします。
『英語でロジカル・シンキング』とは
『英語でロジカル・シンキング』は、日英翻訳者、翻訳学校講師である遠田和子氏による本です。出版社の書籍紹介には以下のように記載されています。
ネイティブ・スピーカーを説得するには、流暢に話せることは必須ではありません。大切なのは考えをしっかりとまとめて、論理的な英語を組み立てること。そのために重要なのがロジック(論理)です。ロジックは相手と同じ土俵に乗るために必要な共通基盤。本書では、「積み木方式」というわかりやすい方法で、「説得できる英語」に必須の論理力を鍛えます。仕事で英語が必要な人は是非とも身につけてほしいスキルが満載です。
ライティングやスピーキングの試験で、つい「カッコいい文章を書かなくては」「流暢に話さなくては」といったことに意識がいってしまい、肝心の中身が疎かになってしまったなんてご経験はないでしょうか?
私はあります…。
自分の英語を評価されると思うと、”英語力を上げよう、良く見せよう”と言った意識が働いてしまうんですよね。しかし、説得力のあるエッセイやスピーチというのは、そもそも論理立っていなくてはなりません。大事なのは流暢さの追求の前に、確かな論理の追求なのです。
ご自身が趣味とされている英語ディベートを通してそのことを強く実感された遠田氏が、論理的に自分の意見を伝える方法とその練習方法を分かりやすく説明しているのが、この『英語でロジカル・シンキング』なのです。
本書の構成はとても丁寧で、ディベートなどをしたことのない学習者でも進めやすいです。
〈目次〉
序章 論理的であるためには
1 論理の型を「積み木」のイメージで身につける
2 はじめに要点を述べる
3 ディベート的手法で複眼的なものの見方を養う
第1章 OREの基本
1 論理的な意見
2 キーワードの重要性
3 ORE で意見をまとめるプロセス
第2章 一本柱のOR
1 何をどの立場で論じるか
2 一本柱の積み木を作る
3 ブレーンストーミング(Brainstorming)
4 対立する立場からのORE
5 論理の型を共有する必要性
第3章 複数の柱の積み木を作る
1 アイデアの分類
2 ナンバリング(Numbering)
3 ナンバリングの表現をマスター
4 2本柱の積み木を作る
5 3本柱の積み木を作る
第4章 反論する
1 反論の目的
2 反論と呼べる意見
3 反論の積み木
4 反論に欠かせないブレーンストーミング
5 英語で反論
6 対比の視点
7 反論のペアワーク
8 面白いトピックリストを見つける
論理的な英文の構成とは何かという説明から、アイディアの出し方とまとめ方、反論の仕方まで、初心者でも学びやすい構成になっています。本を丁寧に読んでエクササイズに取り組めば、確実に説得力のある英文が作れるようになっているはずです。
私はこの本を読んだことによって、”日本語的発想の英文”に違和感を感じるようになりました。
ロジカルシンキングとは
そもそもロジカルシンキングとは、一貫していて筋が通っている考え方、あるいは説明の仕方のことです。1990年代から日本で”ビジネスパーソンに必要なスキル”として認識されるようになってきました。
ロジカルシンキングの英語訳には、critical thinking(批判的思考)が使われることが多いようです。
本書では一貫した論理の型として、OREO(Opinion, Reason, Example, Opinion)という用語が使われています。これは競技ディベートなどで用いられる三角ロジック(クレーム/主張、データ/客観的事実、ワラント/論拠)を、初心者向けに親しみやすくした形なのではないかと思われます。(著者である遠田氏は、英語ディベートをされているそうです。)
また、PREP法という言葉を聞いたことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか?PREP法は、ビジネスシーンで用いられる文章構成方法で、この構成に従ってまとめることで、簡潔かつ説得力のある文章になるとされています。ちなみにPREPは、P(Point/結論)R(Reason/理由) E(Example/事例、具体例)P(Point/結論を繰り返す)のことです。本書の中で用いられるOREOの形式も、最後に主張を繰り返すようになっていて、このPREP法と同様の構成になっていますね。
日本語には伝統的な形式として、起承転結があります。しかし、この展開を英語のエッセイやスピーチに持ち込むと、
- 結論が最後まで出てこない
- 出だしが回りくどい
- 転で話が逸れる
といったことから、英語を母国語とする人たちには”何を言いたいのか分かりにくい”と感じられてしまいます。その結果、「自分の意見をちゃんと伝えたはずなのに、スコアが低かった」と悩む英検受験者さんを目にしてきました。
この本を読めば、英語らしい論理展開がスッキリと分かるようになりますよ。
型を学ぶことの大切さ
と、ここまで英文の”型”についてお話してきましたが、中には「型通りに話すって、誰かの真似だから評価が低いんじゃないかな…」「型どおりに話さなくても試験に合格した人がいるって聞いたけど…」「自分の言葉で話していることにならないのでは…」と感じられる方もいらっしゃると思います。
本書のあとがきにも引用されていますが、立川談志氏のこの言葉を聞けば、型を学ぶことの大切さが伝わるはずです。
型ができてない者が芝居をすると型なしになる。メチャクチャだ。
型がしっかりした奴がオリジナリティを押し出せば型破りになれる。
どうだ、わかるか?難しすぎるか。
結論を云えば型をつくるには稽古しかないんだ。
歌舞伎役者だった中村勘三郎氏もテレビの対談で、心に残る言葉として「基礎がしっかり出来ていて、そのうえで型やしがらみを打ち破ることが型破りで、基礎も何にも出来ていないのに、あれこれとやることを形無しと言うんだよ」を挙げられていたそうです。
役者や噺家の世界の話ではありますが、”話を伝える”という点においては、スピーチやエッセイと共通するところがあるはずです。しかも、英語が母国語でない私たちがいきなりオリジナルを出していけば、”分かりにくい英語”になってしまうのが目に見えています。
まずは型をしっかりと学んで身に付けてから、オリジナリティを出していく。そのための1冊として、『英語でロジカル・シンキング』をぜひ手に取ってみてください。
この本で英文の型を学んだあとは、『ここで差がつく!英文ライティングの技術』で英文をブラッシュアップする方法を学ぶのがおススメです。
また、添削サービスを利用して客観的に英文を評価してもらうと、さらなるブラッシュアップが見込めます。
私が学習アドバイザーを担当しているInspire Englishの英検®集中対策コースでも英作文の添削を行っております。(オーストラリア人ネイティブ講師による添削指導です』
興味のある方はぜひご連絡ください!
Today's proverb
Better to ask the way than go astray:聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥