こんにちは。
本日1/26はAustralia Day!家族の集まりの他、地域のお祭り、コンサート、市民権獲得式典などが行われる、オーストラリア最大の市民行事となっています。
しかしこのオーストラリア・デーに対して、近年オーストラリア国民の中の意識や行動が変化しつつあるようです。といっても、コロナの蔓延が原因ではありません。オーストラリアの歴史とオーストラリア・デーの成立の経緯に深く関わりがあるのです。
そこで今日は、変化するオーストラリア・デーについて、現地の様子とともにおすすめします。
オーストラリア・デーとは
オーストラリア・デーは、オーストラリアの公式な建国記念日です。何をもって建国とするかというと、1788年に第一艦隊がシドニーに上陸し、ニュー・サウス・ウェールズ州のポート・ジャクソンを数日間の探検したのちに、アーサー・フィリップがユニオン・フラッグを掲げた日、なんです。
現在のオーストラリアでは、多様な社会と国土を反映することを目的として、地域や家族のイベント、オーストラリアの歴史を振り返るイベント、地域社会の表彰式、市民権授与式などさまざまな行事が行われています。
オーストラリア・デーは最初からすべての州で祝われてきたわけではありません。1月26日を祝った最初の記録は1808年ですが、これは英国が最初に主権を宣言したオーストラリアの東側の一部地域のみ。1901年の元旦には、オーストラリアのイギリス植民地が連邦を形成し、近代オーストラリアが誕生しましたが、この時点ではまだ公式な記念日ではありませんでした。
最初のオーストラリア・デーは、オーストラリアが第一次世界大戦に参戦したことがきっかけでした。1915年に、4人の軍人の母親が、負傷した兵士のための募金活動を目的として国民の祝日を思いつき、愛国心をかき立てるためにオーストラリア・デーと名付けたのです。
さらに、1935年になってからオーストラリアのすべての州と準州がこの日を「オーストラリア・デー」と呼ぶようになり、1946年には連邦政府と州政府は、1月26日の祝祭日を「オーストラリア・デー」に統一することに合意。1994年にはすべての州と準州でこの日が祝日となりました。
オーストラリア・デーに対する批判
ご存じのようにそもそもオーストラリアは無人の大陸だったわけではありません。アボリジニと呼ばれる先住民がいました。
オーストラリア建国の歴史は、アボリジニへの侵略の歴史でもあるのです。
そのため、一部のオーストラリア先住民や支援者は、オーストラリア・デーを英国入植がオーストラリアの先住民に与えた悪影響の象徴と考え、オーストラリア・デーを、「Invasion Day(侵略の日)」「Survival Day(生存の日)」「Day of Mourning(喪の日)」と呼んでいます。
このような見方から、メルボルンの一部自治体が1/26をオーストラリア・デーと呼ぶことをやめたり、都市部では大規模な「侵略の日」抗議デモが行われています。
在シドニー日本国総領事館 からも、シドニー市中心部のデモ行進に関する注意喚起のメールが届きました。
さらに、2009年11月のニューズポールの世論調査では、オーストラリア・デーの祝賀行事の一環として「オーストラリアの先住民や文化を認識することは重要である」と考えるオーストラリア人が90%、また「国家の文化的多様性を認識することは重要である」と考えている人が89%を占めていると分かりました。
オーストラリア人の意識の変化
こういった流れの中で、オーストラリア・デーに対するオーストラリア人の意識に変化が生まれています。2015年以降のEssential Mediaによる世論調査では、オーストラリア・デーを祝う人が年々減少しており、2019年には40%、2020年には34%、2021年には29%にとどまっているようです。また、2021年には53%が「この日を単なる祝日として扱っている」と回答したそうです。
また、侵略や植民地化の始まりの日となった1/26ではなく、別の日をオーストラリア・デーにしようという動きも広まっています。
その理由としては、侵略の歴史だけでなく、ニューサウスウェールズ植民地の建国を祝う現在の日付は国家的な意義を欠いていること、この日が学校の休暇中に当たるため行事に参加する小学生が限られていること、といった理由もあるようです。
だんだん支持者が増えている日付変更論ですが、候補として、オーストラリア連邦設立日(1月1日)、独立記念日(3月3日)、アンザック・デー(4月25日)、1967年国民投票記念日(5月27日)、憲法の受諾(7月9日)などが挙がっています。
ユニオンジャックの入ったオーストラリアの国旗に対しても、デザイン変更やアボリジニの旗との併用を訴える声も増えてきているそうです。
このような動向から、以前は使用されていた”Happy Australia Day!”というフレーズに対して良い印象を持たない人が増え、使われなくなってきているとのことです。
現地の様子
私は現在、最初の植民地であるシドニーのあるNSW州の町に住んでいるのですが、オーストラリア・デーの今日、バーベキュー施設のある大きな公園に様子を見に行ってきました。
オーストラリアの休日といえばバーベキュー(Barbie)なんですよね。
駐車場から近くの路駐ゾーンまで車で溢れていましたし、公園内も人、人、人!年末・年始のお休み以上の賑わいで、さすが一年で最大の祝日だなと感じました。
ただし、車やタープにオーストラリアの国旗をつけている人はわずかで、オーストラリア・デーを祝っているというより、家族や友人の集まりを楽しむちょっと特別な休日という雰囲気でした。
シティの方には行っていないので、デモ行進の様子は分かりませんが、去年はコロナ禍でも大規模な集会が行われていたようですね。
そしてこれを書いている今(シドニー時間夜9時頃)、どこかで花火が上がっています。
まとめ
オーストラリア・デーは、アメリカのIndependence Dayのように盛り上がる日というイメージを持っていたので、ずいぶんと静かな日であることに驚きました。
オーストラリアだけでなく世界中で先住民族の権利を守る動きが高まっており、アイヌ民族や琉球民族(日本政府は公式には先住民族として認めていない)といった問題を抱えた日本も他人事ではないはず。
このオーストラリア・デーをきっかけに、先住民族やその文化の保護、多様性についてもう一度深く考えてみようと思います。
Today's proverb
Actions speak louder than words.: 行動は言葉よりも雄弁だ