こんにちは。
2018年から2019年の年越しは、オーストラリアのシドニーで迎えました。日本と違って真夏のお正月。除夜の鐘の代わりに花火の音が鳴り響く大晦日は、厳かな日本の年越しと違って、とっても賑やかです。
さてそんなシドニーが、Shitneyと呼ばれているのはご存知でしょうか?オーストラリア最大の都市であるシドニーですが、 物価の高騰や、交通インフラの度重なる問題などにより、住みにくい街になり、オーストラリアの人々からShitneyと呼ばれているようです。メルボルンなど別の大都市に逃げ出す人までいます。
新年から早速、Shitneyを表すようなニュース記事を見かけたので、シドニーの様子について、3度の訪問経験から、実体験を交えてご紹介します。
Shitneyとは?
Urban Dictionaryによると、Shitneyはそのまま、
The city of Sydney, Australia.
と書かれています。
シドニーに対する蔑称ですね。
2019年の元旦から話題のニュース
台湾と中国からの観光客を含む7人のグループが、一人あたり725ドルの大晦日のクルーズツアーを予約していたにも関わらず、電車の遅れによって乗船できなかったというもの。トータルで5,075豪ドル、約40万円が無駄になってしまいました。
大晦日のシドニーハーバーといえば、年越しの花火が打ち上がり、毎年大勢の人で賑わう人気のスポットです。早くから場所取りをする人がいる中、クルーズ船からみる花火は、花火を独り占めしているかのような絶景でしょうね。
一体この日シドニーに何が起きていたかというと、激しい雷雨です。わたしはシドニーから電車で30分ほどの街にいましたが、そこでも夕方くらいから雷雨となっていました。いくつもの落雷の結果、シドニーの主要な交通網が完全にマヒしてしまいました。
上の記事の団体は、7時に出航する船に乗るために5時半の電車に乗ったので、本来であれば50分ほど余裕があったはず。ところが、信号機の故障により、電車がストップ。復旧までの時間に関するアナウンスはなく、電車の乗務員にすら情報が入っていない状況でした。乗務員から電車を降りてタクシーかウーバーを使うことを勧められたのですが、既に道路も封鎖。元の電車に戻ったところ、電車は復旧し、いなくなっていました。仕方なく次の電車に乗りましたが、こちらも遅延。結果的に電車とタクシーを乗り継いで40分でたどり着けるはずのところ、93分かかってしまったそうです。
乗る予定だったクルーズ船は、10分までは待ってくれるという規定があったそうですが、最終的に20分遅れとなってしまったため乗船できず、水上タクシーなど様々な手段を試みましたが途中乗船も不可。5,075ドルと6時間の豪華クルーズが消えてしまいました。
仕方なしに食事する場所を探し、帰りも再び電車の遅延に巻き込まれながら、それぞれの家やホテルに帰り着きました。ホテルではテレビに映る花火をスマホに録画したようです。とても切ないですね。
他にも何千人もの人たちが電車の遅延の被害に遭っていますが、シドニーのあるニューサウスウェールズ州首相は当初、「返金や補償はしない」としていました。しかし、大きな批判が集まり、Sydney Trainsの最高責任者は1/2に、「返金や補償について検討する」と発表しました。
誠意のある対応の遅れは事態を悪化させますよね。
Shitneyと呼ばれる理由
この大晦日から元旦にかけての混乱とともに、シドニーの抱える問題を伝える記事を見つけたのでご紹介します。「シドニーは終わった」という衝撃的な見出しです。
www.news.com.au
2016年度には18,000人がシドニーから他の地域に引っ越したそうです。シドニーを脱出する人の数は年々増え続けており、前年の15,900人から13%の上昇です。現在オーストラリアでは人口第一位のシドニーですが、2026年にはメルボルンの人口がシドニーを上回るとも言われています。
一方で、2017年には93,481人もの移住者がシドニーのあるNSW州にやってきました。先日シドニー市街のスーパーで、同じく日本人観光客と思しき方たちが、「オーストラリア人をあんまり見かけないね」と言っているのを小耳に挟みました。その通り、シドニーは移民の街です。我々が思い描く”オーストラリア人”はほとんどいません。特にアジア系の移民がとても多く、英語圏に来た感覚がとても薄いです。道行く人たちは各々の国の言語で話しているので、英語はあまり聞こえてきません。
逆に言えば、シドニーはそれだけたくさんの国の人たちを惹きつける都市でもあるはずなのですが、住民たちはどのような問題に苦しんでいるのでしょうか。
物件価格の高騰
まずはこれ。物件価格の高騰です。世界の大都市の中で最も物件の価格が高いとされるニューヨークやロンドンを大きく上回る数字となっています。
シドニーの平均的な家賃は、アパート/マンションで週550ドル、一軒家では600ドルです。日本円にするとアパート/マンションがひと月約170,000円、一軒家が約185,000円です。シェアハウスの一室でも、週に300ドルから400ドルとのことですから、ひと月で10万円を超えますね。これはメルボルンよりも43.2%高いそうです。
購入する場合はというと、ローンの支払いを給料の30%以下に抑えたい場合、一軒家では161,858ドル、マンションでは121,026ドルの年収が必要だと言われています。1000万円以上の年収がないと、物件を買うことは考えられないということですね。
但し、2017年のオーストラリアの最低賃金は18.93ドル。1500円弱です。日本の最低賃金の2018年の全国平均が848円と言われているので、日本の約1.75倍です。
であれば、日本の大都市とそんなに変わらないのでは、とも思うのですが、高いのは物件だけではないんです。
物価の急上昇
シドニーでは物価全体が急上昇しています。食料品や雑貨等の生活必需品に加え、交通、学校、病院等の公共サービスの値段も上昇中。メルボルンに比べ、レストランは2.6%、衣服は9.3%高いそうです。
住むところだけでなく、生活費全般が高いシドニー。特に若者たちにとって、この街で生活することはとても苦しいんです。
他の街に逃げ出す気持ちが良く分かります。
度重なる電車の遅延
大幅な遅延が混乱を巻き起こしたのは、冒頭に挙げた2017年の大晦日のカオス一度きりではありません。シドニーの電車はとても古いのですが、新しくするには莫大なお金がかかるため、設備の入れ替えが進んでいません。そのため、ITの問題やアップグレードの欠陥、雷雨による信号の故障などにより、電車の遅れが頻発しています。2017年には、人員不足により1時間以上に及ぶ遅延が発生したこともありました。そのため、混雑する日には電車での外出は極力控えるようにと呼びかけられています。
わたしもこれまで3回のシドニー滞在中、何度も電車の遅延に遭遇しています。乗っている電車が突然止まり、「〇〇のトラブルのため停車しました」というアナウンス以外なんの情報も入ってこず困りました。復旧までにどの程度時間を要するのかも分からず、駅でもないので降りることもできません。ポケットWi-Fiを持っていないので、待ち合わせ相手との連絡手段がありません。さらにはトイレのない車両なので、もしトイレに行きたくなったらどうしようという恐怖との闘いでもあります。ようやく動き出したと思ったら、次の駅まで進んだだけでドアが開き、そのままストップということもありました。目的地の一つ手前の駅だったので諦めてそこで降りて歩きだしたら、駅を出たところで、動き出した電車を見送ったということも。
合計で、ひと月に満たない滞在でこれだけ電車のトラブルに遭ったのですから、住んでいる住人にとっては相当のストレスだと思います。
交通網の整備の遅れ
シドニーの繁華街にあるGeogeストリートに建設中のLight Rail計画は、シドニー市街と、郊外の都市パラマッタを結ぶ新しい路線です。しかし予算オーバーと整備の大幅な遅れにより、工事中の通りの通行止めが続き、周辺の通りはまるで迷路のよう。近隣はゴーストタウンと化しています。数か月で終わる予定だった工事は、2020年までかかる見通しで、予算も1.3倍に膨らんでいます。
電車だけでなく、国内最大の道路建設事業も暗礁に乗り上げており、全くの税金の無駄遣いとなっています。
ナイトライフの衰退
lockout lowsという法律をご存知でしょうか?この法律により、シドニーでは、午前1時半に入店禁止、午前3時以降アルコールの提供禁止となっています。そのため、客足が遠のき、売り上げも大きく減少。その結果、大量のパブやクラブなどが閉店に追い込まれました。
そもそもこの法律は、2012年に起きた悲しい事件により制定されました。当時18歳だった少年が彼女と一緒にシドニー市街を歩いていたところ、通りすがりの泥酔した酔っ払いに殴られ、死亡してしまったのです。この犯人はドラッグも使用していたようですが、この事件によってアルコールに対する批判が高まり、lockout lowsが施行されました。近年では、この法の撤廃を求めるデモが起きており、被害者の父親も、「安全なナイトライフが確立され、この法律が廃止されることを願っている」という声明を出しました。
ともあれ、現状はアルコールに関する規制が厳しいシドニー。ナイトライフの衰退は、観光産業にも打撃を与えています。
移民の制限
ニューサウスウェールズ州首相は、州の移民の受け入れを制限する政策を打ち出しました。近年、移民の問題はオーストラリアだけでなく、世界各国で論争が巻き起こっており、致し方ない時代の流れとも言えます。
しかし、経済への悪影響を指摘する専門家もいます。年々シドニーにやってくる移民の数は上昇しているとは言え、上昇しているのは留学生の数。その留学生は、何十億ドルもの経済的な利益をもたらしています。その数を制限することは、シドニーの経済に打撃であり、シドニーの未来は移民にかかっているとのこと。
このシドニーの移民政策が吉と出るか凶と出るか。今後のシドニーの動向が気になるところです。
以上、Shitneyと呼ばれるオーストラリア最大の都市、シドニーで起こっているさまざまな問題に関するお話でした。
悪口みたいな投稿になりましたが、シドニーは人もフレンドリーですし、何でも揃ったとてもいい街です。中心街から簡単に港やビーチに行ける立地も最高です。予算が許せば、観光だけでなく、留学先としてもおすすめします!
Today's proverb
Pride will have a fall.:驕れる者久しからず