落ち着いて喋れば伝わる英語になる!【日本人の英語は急ぎすぎかも】

こんにちは。

先日、日系オーストラリア人の友人に、どんな非ネイティブの英語が聞き取りづらいのかについて尋ねたところ、「非ネイティブの英語には慣れているので、発音自体は気にならない。ただし早口で話す非ネイティブの英語は聞き取りにくい。逆にゆっくりすぎると、それはそれで理解しづらい」と言っていました。さらに、日英バイリンガルである彼が「日本語は早口だから、日本人の英語も早口になるかもしれない。」という仮説とともに、言語の速度に関する面白い調査を教えてくれたのでご紹介します。

カナダの国旗とカモメ

日本語はスピードの速い言語である

言語のスピードを調べた調査のレポートが、以下の記事にまとめられています。

content.time.comフランスのLyon大学の研究によると、日本語を含む7ヶ国語の言語のスピードを調べたところ、以下の順位になったそうです。

7. Mandarin
6. German
5. English
4. Italian
3. French
2. Spanish
1. Japanese

なんと、日本語は1位!7ヶ国語のみの調査なので、世界ランキングによる位置付けは分かりませんが、英語より速いことは確実なようです。

スピードの測定基準:音節とは

そもそもこの研究において、何を基準に言語のスピードを測っているのでしょうか。発音様式も全く異なる言語の速度を比較する為、この実験では、一定時間あたりの音節(syllable)の数で計測しています。

音節とは、母音を中心とした音のまとまりのことです。日本語の場合は基本的に子音と母音が1セットなので、ひらがな一つ一つを同じ長さで発音します。英語は必ずしも子音と母音が1対1でセットになっているわけではありません。母音なしに子音が続いたり、子音で終わることがあります。

これからのシーズンに良く耳にする言葉を例にとって考えてみましょう。

クリスマスツリー / ク・リ・ス・マ・ス・ツ・リ・ー

日本語の場合、伸ばす音も1音節になるので、合わせて8音節になります。

Christmas tree / christ・mas・tree

英語の場合、何と3音節なんです!

このように、英語と日本語では大きく異なる音節。

1秒あたりの平均音節数を調べた結果、英語は6.19日本語は7.84なんだそうです。日本語は1.27倍の速さということになりますね。

情報の密度との関係性

ではスピードの速い言語は、情報伝達量も多いということなのでしょうか?

この記事には、音節あたりの情報量の調査結果も記載されています。それによると、話すスピードと情報の密度には相関関係があるようです。密度の低い言語は話すスピードが早く、密度の高い言語はゆっくりになるとのこと。結果的に、どの言語も一定時間に話される情報量はあまり変わらなくなるそうです。脳の処理スピードの影響でしょうか。全く異なる言語が似たような結果になるというのは面白いですね。

このレポートによると、英語は密度が0.91、日本語が0.49となっています。日本語に比べて英語は1.86倍の情報密度です。濃い!

ちなみに、この2つを掛け合わせた一定時間あたりの情報量は、英語が5.63、日本語が3.84。英語の方が1.47倍の情報量があることになります。日本語と比べると、英語は効率よく情報を伝達できる言語なのかもしれません。ただし、日本は互いの共有体験に基づくハイコンテクスト文化なので、言語外での意思疎通を含めると、情報量は同等の可能性もありますね。

Syllable-timed languageとStress-timed languageの違い

Syllable-timed languageは音節で捉える言語と言われ、音節ひとつひとつが、同じ強さ、同じ長さで均一に発音されます。一方Stress-timed languageは、重点で捉える言語です。ストレスを置く音を柱に、チャンクという音の塊ができます。ストレスの置かれる部分はゆったり、そうでない部分は母音がリダクションされ、音節を成していても短く弱く発音されます。

日本語やスペイン語、北京語はSyllable-timed language、英語はStress-timed languageです。誰しも母国語以外の言語は速く聞こえるものです。リンクの記事によると、特に英語のようなStress-timed languageの話者には、日本語のようなSyllable-timed languageは一音一音が短く、まるでマシンガンのように高速に繰り出されているように感じられるそうです。わたしからしたら、Stress-timed languageである英語はリダクションが多く、ごちゃごちゃっとした音の塊が速く聞こえるんですけどねー。

第二言語は母語の影響を受けるのか?

話を第二言語の習得に戻します。

語学習得に関する研究において、第二言語習得における母語の影響は「言語転移」と呼ばれ、音声面は母語の転移が強く現れると言われています。大人になってからの語学学習で、発音やイントネーションの矯正に苦戦するのはこの為です。

初心者はゆっくりすぎ、中級者は早口すぎる

では仮に、私たちが英語を話す時に、日本語の音節の感覚を持ち込んでしまったらどうなるのでしょうか?

わたしが英会話スクールに通い始めてから3年。ビギナークラスから始め、今は中上級クラスに参加しています。さらに色々な英語イベントに顔を出してきたので、幅広いレベルの方の英語を聞いてきました。

その中で感じていたのが、「初級者はゆっくりすぎ、中級者は早口すぎる」ということです。単純に英文を作るスピードが追い付かないということもありますが、初級者の英語は一音ずつリダクションせずにはっきり発音されている上、日本語のように全ての子音に母音をくっつけてしまいがちです。逆に、急いでしまって音が滑り、発音があいまいになってしまう中級者をよくみかけます。わたしもその一人です。

その理由がこの調査結果にあるのではないかと思います。

日本語は英語より音節が多い言語です。初級者の場合、英単語を全て子音+母音、いわゆるカタカナ英語にしてしまうと、音節が増え、必要以上にゆっくりした発音になってしまう。中級者になると、子音だけで発音できるようになりますし、リンキングやリダクションが分かってくるのですが、日本語の音節のスピードを基準にしてしまって、必要以上に急いでしまうのではないでしょうか?

日本人は英語の発音に異常なまでのコンプレックスを抱えています。ネット上には有名人の英語発音を揶揄するコメントがあふれていますし、有名人でなくとも、英語を話す日本人ユーチューバーに対して辛辣なコメントが寄せられています。ネイティブやネイティブ同等の帰国子女でない限り、「英語を話せます」と言ってはいけないような空気を感じるほどです。そんな中「英語をネイティブのように完璧に話さなきゃいけない」という無意識のプレッシャーが、早口英語を生み出しているように思います。

 

世界の英語人口のうち、78%が非ネイティブと言われる現代。アクセントがあって当たり前!落ち着いて堂々と英語を話すよう、意識していきたいと思います。

 

Today's proverb

Haste makes waste.:急いては事を仕損じる