こんにちは。
オーストラリア英語の辞書、Macquarie Dictionaryが選ぶWord of the yearが発表されました。2018年はMe Too。日本でも話題になったMe Tooムーブメント。この言葉で世界が大きく動いた一年でしたよね。
Macquarie Dictionaryはのランキングは、他の辞書のWord of the yearに比べ、新語・造語のみから選ばれているのが特徴です。
今日はこのMe Tooや、他に候補となった言葉たちやその意味について詳しく見てみたいと思います。
Word of the year 2018
Macquarie DictionaryのWord of the yearは、数名で結成された委員会が、その年を象徴する言葉75個の中から、15個のリストに絞り込み、さらに1位を決定しています。
www.macquariedictionary.com.au
75個の候補から最終的に選ばれたのはMe Too。他の辞書のWord of the year 2018の候補として上がっていましたが、最終的に1位とはならなかったこの新語。Macquarie Dictionaryではついに1位として歴史に残ることになりました。
Word of the year 2018:Me Too
形容詞
1.Me Too ムーブメントの。
例:Me Too posts on social media.
2.これまで隠されてきた過去のセクシャルハラスメントや性的暴行の告発の。
動詞
3.過去のセクシャルハラスメントや性的暴行により(誰かを)告発する。
例:to be Me Tooed.
me too, Me-Too, me-tooとも表記する。
2017年に始まった#MeToo運動ですが、2018年はその動きが一層広がり、この一連の騒動を語る上で、ただのハッシュタグではなく、ムーブメントそのものを表す言葉となりました。
Me Tooムーブメントの疑いようのない影響力や、今やMe Tooは動詞や形容詞として使われていることから、Word of the year 2018に選出されました。
形容詞としての使用は知っていましたが、動詞としても使われるとは。言葉はどんどん変わっていきますね。
日本でも話題となったMe Tooですが、海外に比べて動きが鈍く、却って日本の根強い性差別が浮き彫りになりました。セクハラや性的暴行がなくなることはもちろん、泣き寝入りをしなくてはならない被害者がいなくなることも祈っています。
特別賞
BDE
名詞
【口語】傲慢や自惚れではない自信。
big dick energyとも。
このbig dick energyという表現は、2018年に亡くなったフードライター/ドキュメンタリー作家のAnthony Bourdain氏の死後、彼の落ち着いた自信を表す言葉として生み出されました。彗星の如く現れ、広く受け入れられたことから、この短縮形のBDEという言葉を、委員会は特別賞に認定しました。
dickという言葉を使っていますが、BDEは男性に限定されるものではありません。また、この言葉から派生して、big legend energyなど、新たなbig 〜 energyという言葉が生まれているようです。
わたしはdickを持っていないので、この言葉の感覚は分かるような分からないような…。男性には頷ける新語でしょうか。
deepfake
名詞
無関係の第三者が、ディープラーニングを利用してコンピュータで自動的に作り出す、特定の個人に似せた合成動画。主に、誤った情報を流したり、復讐や風刺をしたりする目的で使用される。deep fakeとも。
由来:DEEP (LEARNING) + FAKE
deepfakeはまさに時代の表れです。AIの驚くべき進歩が、全く見分けがつかないほど似た動画の作成を可能にし、その動画はSNSによりまたたく間に拡散されていきいます。
deepfakeの登場により、我々は世に流れるニュースから、本物と偽物を見分けるように気を付けなくてはならなくなりました。
AIによって、世の中がどんどん変わっていきますね。昔は技術を持った一部の人が長い時間をかけて作っていたものが、誰でも簡単にできるようになってきています。騙されることも怖いですが、自分の動画を作られてしまう可能性があるというのもまた恐ろしいです…。
single-use
形容詞
使い捨ての
例:single-use plastic bag; single-use cup.
委員会は、このsingle-useという言葉はまだ完全に出来上がった言葉ではないと考えています。なぜならsingle-useは、瀕死のグレートバリアリーフと違い、個人レベルで抑制できるような環境危機を引き起こす要因として捉えられているからです。
2018年オーストラリアでは、大手スーパーマーケットでレジ袋が廃止され、ABCテレビのWar on Wasteという番組の影響により、人々はコーヒーショップで使い捨てカップを使うことに罪悪感を感じるようになりました。
CollinsのWord of the year 2018に選ばれたこのsingle-use。日本語の”使い捨て”は昔から使われている言葉ですが、言葉の歴史とは裏腹に、環境問題に対する意識に関して日本は遅れているとも言われます。スーパーのレジ袋は有料化されましたが、コンビニなどでは普通にもらえますし、おもてなしの心を表す過剰包装も、外国の方からは資源の無駄遣いに捉えられることも。
その他のショートリスト
ab crack
名詞
【口語】腹部の中心に縦に走るくっきりとした凹み。
由来:AB(DOMEN) + CRACK、BUTT CRACK(お尻の割れ目)から。
空前のフィットネスブームの現在。ただ細いだけではなく、引き締まった体を目指す人が増えています。綺麗な腹筋の縦線が、女性たちの憧れとなっています。
わたしも一度は、お腹にan crackを手に入れてみたいものです。
algorithmic bias
名詞
コンピュータのアルゴリズムによってできる先入観。このアルゴリズムを作る際に使われるデータの選択や、プログラマの好みの偏りを反映する為に起こる。
現代ならではの先入観や偏見ですね。人工知能のレベルが上がるにつれて、コンピュータの判断は人間より常に正確だと思ってしまいがちですが、そもそも何を正解とするかという基準には、そのプログラムを作った人たちのバイアスが掛かっているんですよね。
AIを盲信せず、上手に活用していきたいですね。
CRISPR
名詞
1.バクテリアやその他の微生物のゲノムで発見された、リピート配列を持つ遺伝子領域。免疫システムにおいて重要な役割を果たす。
2.DNA配列の断片の追加、除去、交換による遺伝子の書き換えを可能にする技術。遺伝性疾患や病気の治療などに応用できる可能性がある。
正式名称:CRISPR-Cas9
形容詞
3.これらの技術の。
由来:c(lusters of) r(egularly) i(nterspaced) s(hort) p(alindromic) r(epeats)
遺伝子操作に関する倫理的な問題は孕んでいるものの、医学の大きな進歩に繋がるかもしれないというのは、素晴らしい発見ですね。
dark kitchen
名詞
レストランを持たずに、デリバリーアプリやWebサイトからの注文に応じて食事を用意する厨房。
時代とともに、外食産業も変化しています。日本でもウーバーイーツが浸透し始めていることですし、今後ますますデリバリーサービスが盛り上がっていきそうですね。
earthing
名詞
裸足で草や砂、土の上を歩くなど、素肌で身体的に地球と繋がること。生体電流をリセットしたり安定させることで、健康増進に繋がると考えられている。
groundingとも。
人工物に囲まれて過ごす現代においては、意識的に行動しないと、自然と肌で触れ合うことは難しいですよね。テクノロジーの進化は私たちの生活を便利にしてくれますが、同時に身体に悪影響も及ぼします。
earthingの実際の効果は分かりませんが、うちの犬も、草の上を走るのが大好きですし、たまに土や砂の上を裸足で歩くのって、気持ちがいいですよね。
HODL
/ˈhɒdl/
動詞
【口語】仮想通貨を売買せずに持っておく。holdとも。
由来:2013年のオンラインフォーラムの投稿におけるHOLDのスペルミスを面白がったことから定着した
派生語:HODLer
2019年1月15日に辞書登録されたこのHODLは、holdの書き間違いからできた単語なんですね。日本語でも言い間違いや書き間違いから生まれたネットスラングがありますが、英語にも同じような言語文化があるようです。
hygge
/ˈhjugə/
名詞1.満足感や幸福感を得るために、心地よい環境を作ること。
2.心地よい環境を作ったことによって得られる満足感。
由来:古いデンマーク語から
デンマーク人が大切にするヒュッゲ。居心地の良い時間と空間を大切にする文化です。
時代とともに、友達や家族とのんびりした時間を過ごすことが減っていますが、ゆとりのある時間から得られる幸福感は何ものにも代え難いですよね。
CollinsのWord of the year 2016のトップ10にもランクインしていたこの言葉とそのコンセプトは、今後一層世界的なブームになっていくかもしれません。
incel
/ˈɪnsɛl/
名詞
自分は女性と性的な関係を持てると信じているが、女性たちにとっては全く魅力的ではない男性。主に、彼らの性差別的で無神経な態度が原因だが、自分がモテないのはフェミニズムなどの社会的要因によるものだと思っている。
由来:IN(VOLUNTARY) + CEL(IBATE)
うん、まぁいますね、こういう人。この単語は男性ですが、男女問わずいるんだと思います。婚活中の身としては、自分がこうならないように気をつけたいものです。
intimacy coordinator
名詞
セクシャルハラスメントから俳優を守る為に、映画やテレビ、舞台において、裸や性的描写を含むシーンの監視や演出をする人。intimacy directorとも。
Me Tooムーブメントの中で、エンターテイメント業界の数々の著名人が告発されましたが、セクハラや性的暴行の問題は個人間だけで起こるものではありません。性的なシーンの際に現場で起こるセクハラについても明らかになりました。
日本の現場でももう導入されているのでしょうか?
VAR
名詞
1.サッカーにおいて、フィールド上のラフプレーのビデオ映像によって、審判の判定を監視する人。この結果は、主審に伝えられ、主審が確認した上で改めて判定を下す。
2.このような判定で利用されるシステムや技術。
例:to replay footage from the VAR.
CollinsのWord of the year 2018でも候補に挙がっていましたね。ロシアのW杯で導入され、話題となりました。
動体視力が弱いわたしは、常々、審判の方達を尊敬しています。
vertical farming
名詞
室内や建物側面などにおいて、縦に傾けて重ねたり、積み重ねたりした構造で作物を育てること。従来の農法に比べ、水や場所を削減することができる。
派生語:vertical farm, vertical farmer
さすが農業大国オーストラリア!といった感じのラインナップですね。farm絡みの言葉がランクインしています。と言っても、広大な土地で作物を育てるのではなく、限られたスペースと資源を生かす方法です。新しい農業の形ですね。
日本に比べて土地が広いイメージのオーストラリアですが、住宅街を見ていると、二階建ての家も増えてきていますし、マンションがどんどん建設されています。元々オーストラリアは水が不足気味と聞きますが、それに加えて、土地も不足してきているということかもしれません。
辞書を出版する各社がWord of the yearを発表していますが、新たに生まれた言葉で作られたリストというのは、個性的で面白いですね。
同じ英語圏同士、メディアやインターネットを通して入ってくる情報が共通しているからか、ある程度同じような言葉がランクインしているというのもまた、興味深いです。
他の辞書によるWord of they year 2018は以下をご覧ください。
Today's proverb
Grasp all, lose all.:全てを手に入れようとすれば、全てを失う